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【再掲】フィクションとゴリラとノンフィクション

動物同士闘わせたら結局どいつが一番強いのかっていう話題をよくするんだけれども、みんなすると思うんだけれども、庶民が暇つぶしにそういう話題をするのは大いに結構なんだけれども僕ぼちぼちお金持ちでいわゆる社交界? みたいなそういうところにも進出するようになって、そういうところでも庶民と同じようにそんな話するんだなって感じで最初は何か嬉しくなっちゃって、とりわけ僕が何でそこそこにお金持ちかっていうのも文章を書いたらお金がたくさんもらえるからみたいなのもあって、なんかエッセイスト的な、でもなんかそんな繊細な文章を書くようなやつでもなくてみうらじゅん的な? まぁ、こんな言い方みうらじゅんに失礼なんだけどもまぁ、そういう言葉尻とりまくって自分に都合のいいように論理をこねくりまわして相手を負かすっていうのは僕の得意ジャンルかつ好きジャンルなわけで、だから僕はいつものようにゴリラ最強説を押しまくってたんだけどやっぱり金持ちは違うなと思うのは、そこで「じゃあ俺の飼ってる虎と闘わせるからゴリラ連れてこいよ」って流れになったことで、そういうわけで僕は今ジャングルにいる。でかい鳥がうるさい。

つまり僕は僕の文章を書いたらその対価としてお金がもらえてたわけで、つまり僕の頭の中にあるもんを出せば出すほどお金がもらえるわけでだから何というかすごい資本力があるようなそういうタイプの金持ちじゃなくて、ていうか金持ちじゃないんだな僕よく考えたら、だから「ちょっとゴリラ連れてきてよ」っていう程のお金はないのだどんなお金だ。かと言ってじゃあそんな話受けなきゃよかったじゃないか、うやむやにすればよかったじゃないか、と誰でもそう思うと思うんだけど、っていうか僕も思ったんだけどなんか向こうの機嫌を絶妙に最高に損ねちゃったみたいで相手がえらいヒートアップしちゃって結局最後の方とか僕拳銃突きつけられてたからね、ていうかアレちゃんとした社交界じゃなかったんじゃないかな、いや社交界が何なのか具体的なところは僕よくわかんないですから最終的に社交界は拳銃出てくるようなところなんですよ、って言われたらそれまでなんだけれども、なんか拳銃ってすごかった重くて堅くて黒くてさ、ピストルとかいうとなんかかわいく聴こえちゃうけど拳銃やばいマジやばい、どれくらいヤバいかっていうと本当にゴリラ探しにジャングルまで来ちゃうこの僕の行動力を呼び起こす? 呼び覚ます? ていうか、ほぼ強制みたいなもんだけれども、それくらい拳銃っていうのはすごいんだよ。

それで出会うんだ、僕は、ゴリラに。

半ば出会えると思ってなかったっていうかフワフワしてたんだろうね、よく考えたら素手だったんだよ、「ゴリラ捕まえに行く」っていう目的でジャングル来てるつもりでいたんだけどそれはやっぱりつもりに過ぎなかったんだよ、本当のところ僕は捕まえる気持ちがなかったんだと思うし出会えるとも思ってなかったんだろうしその結果として僕は素手でゴリラに対峙したわけなんだけど、ゴリラいるんだよ、拳銃同様にゴリラも余裕で存在するし出会えるんだよね、そこのところに対する認識が僕は甘かったしそれに気付いたつまりゴリラと対峙した瞬間にはもんのすごく後悔もした。そもそも拳銃をリアルに感じてゴリラ捕まえに行くハメになったっていうのに、僕は結局ゴリラに出会うその瞬間までゴリラについてリアルに考えることができなかったってことなんだろうな、ていうか、全部そうなんだろうな、そうやってみんな生きてるんだろうし、だから戦争とか他人事だし、殺人事件とかテレビで見ても何にも思わないし、そういう人類のツケっていうと大げさなんだけれども、少なくとも僕がこれまで生きてきたツケみたいなもんが集約されたのがこのゴリラなんだろうな、ヤバいな殺されるな、みたいなそういう運命論めいたことを頭の中で漠然と考えてるうちにもガムシャラに身体は動いててなんか気付いたら僕はゴリラに勝ってた。

いわゆる頭が真っ白になったような状態だったんだろうけど、僕はその真っ白な頭のうえにちっぽけな運命論を塗りたくっていたんだけど、それは何だかちっぽけな考え方だったみたいで、僕の人生があそこで終わっていたならばそれでよかったんだろうけど、生き延びてしまったので色々価値観を変革せざるをえなくてどうしようみたいなんを今は思ってる、ていうのもていうか明らかに少なくとも、ゴリラは僕より弱い。つまり、最強ではない、ていうことが明らかになっちゃったわけで、虎とこのゴリラ闘わせたところでそれって二位決定戦みたいなもんじゃないか、意味あんのか、いやいやじゃあ僕が虎と闘えばいいのか、それも何かおかしいだろ、ていうか、無理。でも、ゴリラの時も無理とは思ったけど勝っちゃったんだし、そういうわけで僕は今すごく困っているんだけど、不思議なのはじゃあ今もう1回ゴリラと闘って勝てるのかって言われたら事実1回勝ってるはずなのに全然そんな気はしないし、もっと不思議なのはじゃあこの前勝ったのはまぐれだったのかって言われるとまぐれって言い方はちょっと違うと思うし、それはそれ、これはこれみたいな、現にそれでも僕はゴリラ最強説を押したい僕がいてもいいと思うし、現にいる。僕はゴリラに勝ったけど、ゴリラ最強説は揺るがないしゴリラが虎に負けてる絵がもう僕には全然想像できないから、ていうかそういうゴリラであって欲しいからゴリラには頑張って欲しいな、と思ってる僕が一つだけ気がかりなのはあの拳銃は本当の拳銃だったのかな、ってまぁ別に拳銃自体が本物なのはいいんだけど、あそこで僕が拳銃に屈したのはどうだったんだろう、いやゴリラに勝ったから調子乗ってるとかそういうことではなくて、僕がほぼ一般人ていうかそこそこヒョロヒョロよりなんは重々承知なうえで、拳銃で人を撃つと死ぬうえで、そのうえで、こういう風に考えているのは何でだろう。

まぁ、いいさ結論は来週に出るんだから、来週の土曜の夜に僕のゴリラとどっかの金持ちの虎が闘うんだ、虎の名前はデ・ニーロらしくて猫くらいの大きさの頃から大切に育てられてたらしいえらいかわいがられているらしい、そんな箱入りの虎にゴリラが負けるわけないじゃないかないない絶対ない、目に浮かぶ、大事な虎をゴリラにボッコボコにされたらあの成金ハゲのことだきっと激昂してこのゴリラに拳銃を向けるだろう、それは僕が止めなくちゃならない、拳銃で撃たれると死ぬ、人もゴリラも平等に、でも僕は飛び込むんだよ拳銃の前に、そして、拳銃に勝つ。わかる。イメージできる。ゴリラはデ・ニーロに勝ち、僕は拳銃に勝ち、ゴリラ最強説はゴリラ最強説のままであり続ける、それは僕とゴリラがもう1回闘うとかそういうことじゃなくて、本当にそれはそれ、これはこれなんだ。そういえば僕が捕まえてきたゴリラに、僕はまだ名前をつけていない。ゴリラはゴリラだからだ。名前をつける時がくるとしたらきっとそれは来週の土曜以降のことになるんだろうな、みたいなことは漠然と考えているけれど、今はまだ全然そういう気分じゃないから、無理やり自分の気持ちを盛り上げてどんな名前がいいかななんて考えてみるけど、やっぱしゴリラはゴリラなんだよな、きっとこういうもんだろうと思うしそれでいいんだと思う。とりあえずそりゃあもうボッコボコに虎ボッコボコにして来いよ、ゴリラ、期待してんぞゴリラ、

「期待してんぞゴリラ。」

僕が声をかけても気にする素振りもなくトレーニング終えてひとっ風呂浴びてサッパリしたゴリラはちゃんこ鍋を夢中で食っていた。箸で。